この度はエレキギター用ペダル型エフェクター、Fulltone(フルトーン)社Clyde Wah(クライドワウ)について
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ワウペダルとは何だろう?
そもそもWah(ワウ)とは、、一種のパラメトリック・イコライザー(特定の帯域を強調、減衰させることが出来るエフェクター)です。
パラメトリック・イコライザーにおいてのフリークエンシーをペダルがついていることで移動でき、強調させる帯域を低域から高域まで動かすことが可能です。
通常のフットペダル型エフェクターとは違い、電動ミシンの操作ペダルの様な形状をしています。そのペダルを前や後ろに踏み込むことで演奏者自身が効果をコントロールできます。
OFFの状態から前へ強く踏み込むとスイッチがONになります。前側へ踏むと高域が協調され、後ろ側へ戻すと低域が強調されます。
どんなフレーズでもいいので、弾きながらペダルを前後に動かすと「クワクワ」という「誰でも一度は聞いたことがある」サウンドになります。ペダルにバネはついていませんので、足を外すとペダルはその位置で留まり、効果が持続します。再度前へ強く踏み込むとスイッチがOFFになりバイパス状態になります。
Fulltone / Clyde Wahは何が特別なのか?
今回取り上げたFulltone社製Clyde Wah(クライドワウ)は、ワウの60年近い歴史の中でも、名機の誉れ高い通称「クライド・マッコイ・ワウ」のヴィンテージサウンドを目指したワウペダルです。
まずはその実際の音からお聞きください。
アンプはFender / Vibro-KingのVol8程、その他のエフェクト無し
クライド・マッコイ・ワウ
トランペット奏者の「クライド・マッコイ」は、1920年代後半にトランペットのミュートを使ったワウ・ワウサウンドを作り出しました。
1967年にはイギリスの楽器メーカー「Vox」が彼の名前を冠した「クライド・マッコイ・ワウ・ペダルV847」を発売します。初期のバージョンでは、ボトム・パネルに彼の署名付きの肖像画(Picture)があり、「ピクチャー・ワウ」との愛称があるほど特に珍重されています。
クライドの名前はプロモーションのために使用され、クライドはペダルの使用や開発とは何の関係もなかったようですが、「クライド・マッコイ」といえば、良質なワウワウペダルの代名詞のようになっています。
著名な使用者
当時のV847の有名な使用者としては、ジミ・ヘンドリクス、エリック・クラプトンが有名です。
ジミのV847を使用する動画は「Jimi Plays Berkeley」においてのリハーサル風景で見ることができます。
エリック・クラプトンにおいては「ホワイト・ルーム」
超ベタな選曲ですが、フェイザーの様にリズミックに中低域辺りで踏んでオルガンの様な音を演出したかと思えば、曲の盛り上がりと共に叫ばせることも忘れません。
発売間もないV847を22歳のクラプトンがフレーズごとに踏み方を変え、完全に弾きこなしているのには改めて驚きます。
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まえけんビーバーのワウ遍歴
私はギターを始めたころからジミヘンやクラプトンが好きでしたので、ワウ・ペダルは欲しいエフェクターでした。
最初に買ったのは
・JimDunlop社のジミヘンワウ
・Voxのワウペダル(復刻)
どちらも随分役に立ってくれたワウでした。
時代背景(1990年代)
私が20代の頃のポップミュージックはレニー・クラビッツやレッドホットチリペッパーズ、らの登場で60年代、70年代へ回帰するソウル、ファンク、それらに影響を受けたロックが流行していました。80年代の反動かのようにヴィンテージサウンドに傾倒した音は古い名アンプ、ギター、エフェクターで鳴らされていました。
そんな中、楽器メーカー各社からオリジナリティあふれるワウ・ペダルが発売され「ワウ群雄割拠」ともいうべき時代を迎えます。
・ON/OFFが楽ちんでハイパーな効きのMORLEY BAD HORSIE
・ROGER MAYER VisionWah
・Boss PW-10(モデリング技術で名機を再現)
私の中では「ワウ・ペダルはVOXで充分」と考えて、あえてワウを探していなかったある日、勤務する楽器店に営業の方があるワウ・ペダルを持ってこられたので、早速試奏させてもらいました。
そのワウ・ペダルと比較すると、今まで気に入って使っていたVOXワウが薄い膜で覆われているような音であるのに比べ、そのワウ・ペダルはワウの掛かった音が手に触れるぐらい近く感じられる音でした。ワウ音の輪郭が、良く研がれたナイフの刃先のような美しさです。
独創的な音ではないのですが、伝統的なワウの王道サウンドから徹底的に雑味を削ぎ落した洗練された音でした。
そのワウ・ペダルこそがこのFulltone(フルトーン)社Clyde Wah(クライドワウ)でした。
鉄の板を曲げて作られた角ばったボディーにまっ白のペイント、軍用の機器にスプレーでステンシルされたような「CLYDE」ロゴ。
他社の定番ワウ・ペダルのボディーが鋳物(金属をとかして鋳型に流し込んで作られた器)で黒色なので比較すると、とにかく独特の存在感です。
「今までの定番品とは全く違う」ということをより明確に打ち出したかった「マイク・フラー」さんの気概が感じられます。
当時の価格
価格も「定番品と全く違う」¥69,800税別であったと思います。
回路のシンプルさと反比例するのその価格設定に、音を出す前は「なんじゃそりゃ」という気持ちでしたが、音を出してしまった後はなんとなく納得してしまいました。
また裏ブタを外した中の基盤に自分好みに調整するツマミがあるらしく、それを含めてワクワクさせるワウペダルでした。

マイク・フラーさんのサインとシリアルNO.2554と共に例のツマミがあります。効果はパラメトリック・イコライザーにおけるQと思われ、強調する量を変えられます。
矢印↓はマイクフラーさんがチェックしながら一番推奨位置につけてくれているそうなので、まじめにその位置を守っていましたが、今はもう少し突っ込んだ位置に変えています。

このツマミの位置ではクリーンサウンドの時には効きすぎてしまうのですが、クランチサウンドが主の最近はこの位置くらいがちょうど良いようです。
因みにこのつまみを写真の位置以上にすると、ペダルを後ろへ戻した際、スピーカーを飛ばしてしまいそうです。
結局そう時間もたたない内に、その営業の方も私もクライドワウの音に魅せられ、クライドワウオーナーになってしまいました。
ジミヘンワウ、VOXワウ、と続いたワウ遍歴でしたが、これにてワウ探しの旅は終わりました。
高価でも売れた本製品
それからというもの、ワウ・ペダルを買いたいという楽器店のお客さんにはどんな予算の人にも一応比較対象としてクライドワウで音を出してもらいました。
店長と私で10台くらいは買ってもらったように思います。
予算オーバーのとても高い買い物をさせてしまったお客さんもおられたと思いますが、今でも気に入って使ってくれていれば、安い買い物であったと思います。
ワウペダルの効果的な使用法
ところで今回のエッセイを書くにあたって、ワウ・ペダルについて言及しているサイトをいくつか見てみたのですが、その使い方について掘り下げているサイトが少ないように感じましたので少し書いてみることにしました。
大きく分けて3タイプ
1、リズムに合わせるプレイ
一番オーソドックスといえるプレイです。前出の「White Room」のバッキングでも聞けますが、「ウルフルズ」の「ガッツだぜ!!」のイントロでは名手ウルフルケイスケさんとストラト、Fender系アンプ、ワウ・ペダルの4身一体のピュアなサウンドが聞けます。繊細なクラプトンとは違って、その名の通りガッツあるサウンドが素晴らしいです。
2、フレーズに合わせるプレイ
フレーズや曲の展開にわ合わせて開き具合を調整し、ここぞというときに踏み込むことで感情を表現することが出来ます。口をパクパクさせるもよし、ネックをオーディエンスへ突き出すもよし、アクションとシンクロさせることで効果は倍増します。
The Jimi Hendrix Experience – Voodoo Child (Slight Return) (Live In Maui, 1970)
私の若き頃の演奏はこちら↓因みにこのころはまだ「VOX(復刻)」でした。
Blues – Che Guerrilla @チキンジョージ(2001/7/1)
3、ペダルを止めたまま(パライコ的用法)
クイーンのブライアン・メイは中域を強調した一つの音色として、曲に取り入れました。
余談ですが、クイーンの前身のバンド「スマイル」ではジミのカバーもやっていたそうです。
ジミがイギリスでデビューしたことが、当時のイギリスの若者に与えた影響は計り知れないものがあったと思われます。
また元ポリスのスティングは15歳の時にジミのライブを見て衝撃を受け、ライブが終わったその足でレコード店に向かい、「ヘイ・ジョー」のシングルを買ったそうです。
私は意図的にフィードバック奏法(スピーカーから出ている大きなギターの音が直接ギターの弦に当たることにより再度弦の揺れを引き起こし、音が減衰せずに無限に伸びる奏法)をするために使っています。
フィードバック奏法とはそもそも偶発的に起きた現象をジェフ・ベックが音楽に取り入れたことがはじまりとされる(諸説あり)奏法なので、どの弦のどのフレットで起きるかをコントロールしにくいのですが、アンプから出る音量と歪みをフィードバックする寸前に設定しておき、ここぞというときにワウをONにすることでフィードバックが出易い状態になります。
ペダルの位置でフィードバックする弦やフレットを調節できるので、とても実践的かつ気持ちいいです。フィードバックを得るために何らかの歪みを足す方法もありますが、その後のソロやリフの音色に大きく影響が出てしまいますし、どの弦のどのフレットでフィードバックするかはワウ・ペダルを使う方法と比べるとコントロールしにくいです。
以上拙い説明でしたが、これらをヒントに、ご自宅のワウ・ペダルの活躍する場が増えるなら本望です。
耐久性
あとクライドワウについて、特筆したいのはその耐久性です。もう作られてから20年近く経とうというのに、全く壊れません。ワウ・ペダルの泣き所のポットはガリ一つ出たことがありません。

長く置きっぱなしにしていますと、ON/OFFスイッチが機嫌が悪くなったりはありますが、クライドワウ以前に所有していたワウ・ペダルのように足をのせる部分のゴムが剥がれるようなことは全くありません。
不必要と思われるほど、強靭な部品や接着剤を選定しているからこその耐久性であり、多くのファンを得ている秘密かもしれません。
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