Fulltone Octafuzz

私が愛用するエフェクターFulltone(フルトーン)社製Octafuzz(オクタファズ)について、専門用語が多いですが音楽を始めたばかりの人も読んで頂きたいです。

まずエフェクター”effector”とは…
大きな意味においては英語の”effect”「効果」に”or”がついて「効果を与えるもの」という意味ですが、特に現代音楽業界では、「音に何らかの効果を与える機械」を指していることが多いようです。

一言にエフェクターと言っても全世界にかなりの種類があり、レコーディングスタジオで用いられるエフェクター、ライブステージで用いられるエフェクター、他ヴォーカル専用やエレキベース専用など様々なエフェクターが存在します。

“Octafuzz”(以後オクタファズと表記)は、
・エレキギター用
・フットペダルタイプの形状(使用者であるギタリストが立って使用することが多いことから、エフェクトのon/offを足で踏むことにより切り替わるスイッチがついている)

シンプルな回路が生み出す繊細さとは裏腹に、足で踏んでもビクともしない堅牢性も兼ね備えています。

ところで音楽・楽器業界では、エフェクターに限らず古き良き「名機」というのは人気が高く、所有すること自体がステータスと言われています。
また出音にオリジナリティーがあり、現存数が少ないモデルや製造中止のモデル、同じモデルでも評価の高い製造時期のモデルは高値で取引されています。

ところがエフェクターのように、古いものでは1960年以前に製造されたモデルを、新品当時と同じようにツアーやレコーディングに使い続けるには、いろいろと問題が出ることが多くなります。博物館入り級のモデルは盗難の可能性も否定できません。

そのジレンマを解決すべく、アメリカで急成長を遂げたのが、エフェクターメーカーのフルトーンです。

フルトーンはアメリカ西海岸のマイク・フラーというビンテージ楽器のコレクター・研究家がごく身近のミュージシャンのためにハンドメイドでエフェクターを製作していたことが始まりのようです。

最初は自身のヴィンテージエフェクターコレクションをもとに、それらのレプリカを作り始め、徐々に信頼を得ていったと思われます。その特徴は、ミュージシャンからの要望を取り入れつつ、出音のクオリティーの維持、使いやすさ、耐久性・メンテナンス性の高さ、を高次元で組み合わせたものと言えるでしょうか。

私が購入した当時の取扱説明書にはフルトーンユーザーが列挙されており、バンドではザ・ローリングストーンズ、ザ・ブラッククロウズ、オアシス、プライマス、個人ではルー・リード、レニー・クラビッツ、カーク・ハメット(メタリカ)、タイ・テイバー(キングスX)など、音にうるさい人がずらり。
世界中のプロフェッショナルに使われ、又信頼されているのが分かります。

そのフルトーンで最初に作られたモデルがこのオクタファズです。

このオクタファズはタイコブレア社の”Octavia”をもとに作られました。
注釈:オリジナルは電子エンジニア、ロジャー・メイヤー (Roger Mayer)により創作された。インプットシグナルの音程を1オクターブ上げて原音とミックスし、ディストーションをかけアウトプットシグナルを生成するエフェクト。
その使用者として有名なジミヘンドリクスがツアー中に故障した本器を修理に持ち込んだ際、コピーされ、製品化されたものが、タイコブレア社の”Octavia”という説があります。

マイク・フラーが最初にこのモデルを選んだ理由は、当時すでに”Octavia”が「名機」として認識され入手困難となり、価格も高騰していたこともあるでしょうが、マイク・フラー自身やマイク・フラーの身近なギタリスト達が”Octavia”が持つ唯一無二のサウンドをシンプルに好きだったのでは?と私は考えています。

それは今も根強いジミ・ヘンドリクス(以後ジミヘンと表記)の人気が大きく影響してると思われます。

2011年ローリングストーン誌のギタリスト人気投票では、死後40年以上経てジミヘンが人気一位を獲得したことがそれを証明しています。

彼が名声を得るきっかけとなったシングル”Purple Haze”のギターソロではこの”Octavia”が効果的に使用されており、その後のアルバムやライブステージで好んで使用されています。

後のギタリストではスティヴィー・レイ・ヴォーンや後に紹介しますジョン・フルシアンテ等、ジミヘンに影響を受けたギタリストたちによりあらゆる場面で使用されていきます。

音の特徴は、ギターの音を強力に増幅させ、特に高音の倍音を強烈に強調することにより、アナログシンセをフィルターで発振させたようなフリーキーなサウンドになり、一般的な歪み系とは全く違うサウンドです。

特に前述の「特に高音の倍音を強烈に強調する」サウンドは単音で弾く際には圧倒的な存在感を与えてくれ、やみつきになることなること請け合いです。

しかし、複数弦で弾くとギターの音に無限の倍音を追加してしまう為、何を弾いているかわからなくなってしまうという諸刃の剣的側面もあります。

実際、私のオクタファズをアメリカ出張のついでに買ってきてくれた方は「先に試し弾きさせてもらったんだけど、良さがサッパリわからなかった」との感想でした。

ともかく実際の音をお聞きください。

近代3大ギタリストに数えられるジョン・フルシアンテ(元レッドホットチリペッパーズ)のダークでハイテンションなソロが2:28頃から始まります。

特にソロのエンディングは、ジョンがクォーターチョーキングをしながらフィードバックさせ、スタジオ内で快感に打ち震えている様子が目に見えるようです。
因みにこのギターサウンドは、”octavia”以外の使用機材の、恐らくマーシャル1959、ファズフェイス系の歪み、途中からはワウペダル、の効果も大きく影響していますので、ご自身で再現するとしても”octavia”やオクタファズだけではこの音になりませんのでご承知ください。

僭越ながら私の音もお聞きください。

本器の操作法は、
・音量”volume”
・歪み”boost”
2コントロールです。

どのツマミ位置でもOKですが、
コードを中心に弾く場合、”boost”を上げ過ぎると何を弾いているかわからなくなるので注意しましょう。
私がこのペダルを踏むときは、
音にパンチを与えたい時です。加えて3音までのコードも弾きたいので、”boost”を抑えつつ、”volume”を突き気味に設定し、後段のアンプもしくはエフェクターをブーストしています。
ちなみに外部電源入力は通常の9Vですが、センターが”プラス”で通常と逆です。

背面の字が上下逆、演奏者が立ったまま覗き込んだ際に読み易く書かれているのがおしゃれエフェクターの後ろの写真

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Gibson SG Standard

この度は私が愛用するエレキギター
Gibson(ギブソン)社
SG(エスジー)について

まず最初にGibson(ギブソン)社とは…

「1894年創業、アメリカ・テネシー州ナッシュビルに本拠を置く楽器メーカー。主にアコースティック・ギター、エレクトリック・ギターを製造している。」(wikiより)
とあります。
アコースティック・ギターにおいては、Martin社(マーチン)と人気を二分、エレクトリック・ギターにおいては、Fender社(フェンダー)と人気を二分しており、誰もが憧れる高級ギターメーカーです。

現在は多様な楽器メーカーを子会社に持つ総合楽器メーカーでもあります。

SG(エスジー)とは、

「1961年のニューモデルとして発表したエレクトリックギター。
名称の「SG」はSolid Guitar、ソリッド・ギターの意。」(wikiより)とあります。

私の愛機は、1992年製のギブソンSGスタンダードです。
当時は
「’61 Reissueモデル」
「SGスタンダード」
「SGスペシャル」の
3機種が発売されており、真ん中のグレードでした。

ギブソンカスタムショップからは「SG CUSTOM」(3PU、ゴールドパーツ、New Gibson Vibratoが装備)も発売されていましたが、非常に高価であったと記憶しています。福山雅治さんが使用されているのはこのモデルでは、、、?

この「SGスタンダード」、当時は新品で20万円弱であったかと思われますが、たまたま勤務していた楽器店に中古ギターとして入荷したのを一目ぼれして購入しました。
ほぼ試奏もせず、音が出るか確認をしただけで買ってしまったと思います。

音の特徴は、マホガニーらしい歯切れの良さがバッキングに向いており、ブルース、ファンク、ロック何でも来い。まろやかなトーンはJAZZやスライドギターにも使いやすい音です。

しかし、私個人の意見ですがGibson社のエレキギターの中では、ピックアップのタイプを問わず、レスポール系モデルが最もいい音が出ると思っています。
レスポールユーザーといえば、ジミー・ペイジ、スラッシュ、ゲイリー・ムーア、奥田民生、一時期のジェフ・ベック、一時期のカルロス・サンタナと高中正義(使用ギターはYamahaのSGですが、メイプルトップ、マホガニーバックのレスポール系という観点で挙げました)とギターが中心、もしくはギターが大きな役割を務めている曲が多いミュージシャンが並びます。メイプルトップ、マホガニーバックのボディーが生み出す、高音の張りと抜け、それを支える低音のバランス、サステインと鳴りのバランス、ストラップにかけた際の重量バランス、弾きやすさなど、どれをとってもレスポールが勝っていると思っています。

そういえば、1961年のSG発売時にギターヘッドに「LesPaulModel」のプリントをしたいという、ギブソンからのオファーをレス・ポール本人が拒否したという話があり、SGの音はレス・ポール本人の好みに合わなかったということなのでしょう。

しかしながら、バンド内でのアンサンブルという観点で見ますと、SGにも分があるのでは?と考えていますが、それは前出の「歯切れの良さ」に秘密があります。
私たちが耳にしますあらゆる音楽の中でギターは使用されていますが、その曲の演奏時間の8割以上は歌のバッキングです。そこで前出のレスポールをジャーンとやっちゃいますと、低音も高音も前に出てき過ぎてしまいます。音作りで調整はできますが、「歯切れの良さ」は機材で作れるものではありません。

このSGのデメリットにも思える「歯切れの良さ(裏返せばサステインの無さ)」「出過ぎない高音と低音(裏返せば中域の強めな音)」は歌やリード楽器のバッキングには最適ということも出来ます。
それを踏まえてSGユーザーを列挙しますと、
ピート・タウンゼント、アンガス・ヤング、トニー・アイオミ、一時期のカルロス・サンタナ(’69 Wood Stockのソウル・サクリファイスは最高ですよね)、デレク・トラックス、ポール・ウェラー、ジ・エッジ、トム・ヨーク、中山加奈子等々、、
何か共通項を感じませんか?ただ私好みのミュージシャンが多いだけでしょうか?

ところで、私のSGはヘッド裏の製造番号93142383から察するに(参照ページ)1992年製造のギターです。クルーソンペグ(ちょっと何かにあてただけでひん曲がってしまう華奢なペグですが、その華奢さでマホガニーネックへの直接的な衝撃を和らげているともいえるそうです。)、エスカッション無しでピックアップはピックガードに直に取り付けタイプです。ブリッジのコマはストリングセイバー製に変更。極端に弦切れが減りました。

ピックアップは古くからの友人のA氏に頂いた、ギブソンヒストリックコレクションレスポールの純正ピックアップのバーストバッカータイプ2とタイプ1のペアに積みかえています。
その音はビンテージでナチュラルなギブソンサウンド。タイプ2の方は少々ホットですが、特定の音域を押し出すことなく、そのギターが持つ木の鳴りを引き出してくれます。ビンテージ感を尊重するため、ロウ漬けしていないので、強烈に歪ませたり、極大のアンプで鳴らすとハウリングしやすいのは難点です。後にロウ漬け処理しましたら、ハウリングは皆無となりました。

第一回のエッセイのジミヘンストラトと同様、製造から20年以上の時間を経ることで、極太ネックを含めたボディー全体の鳴りが良くなってきて、買ったばかりの頃よりも音が良くなっています。

しかしこのSGは、悲しいことに一回ネック折れを経験しています。

当時、私は楽器店勤務でした。ネック折れで楽器店に持ち込まれるギターの9割はマホガニーネックでしたので、マホガニーネックの折れやすさは誰よりも理解していました。スタジオ練習でもイスやアンプに立てかけたりはせず、移動には極力ハード・ケースを用いていたのですが、それでも意外なハプニングでネック折れしてしまうことになりました。

2004~2005年頃、友人で私達貧乏なミュージシャンの支援者でもあられたYさんが、再建築前の神戸チキンジョージであるライブを主催されました。
トリにはXJapanのPataさん率いるRa:IN(ライン)が出演されるという大きなライブの末席に出させていただいたと記憶しています。

いざ出演となった際、私はSGをストラップで肩に掛けた状態で、楽屋からステージに向かう廊下を歩いていました。
SGをストラップで肩に掛けた状態で、右前のズボンのポケットからピックを取り出しながら歩くと、必然的にSGのボディーを左へ押し出すような形になり、廊下の手すりへギターのヘッドを差し込む形になってしまいました。

その状態で私はステージへ急いで歩いています。

ネックの一部分に、てこの要領で私の体重が掛かり、「メキッ」という音がしました。反射的に手すりからSGのネックを引き抜いたのですが、時すでに遅し、完全に折れてはいないものの、弦はべローンとテンションが無くなり。木目に沿って裂けたネックからは、濃い茶色のマホガニーがむき出しになっています。
演奏が終わってからならまだしも演奏前に、、
「やってもた」の一言です。

ステージはもう私のバンドを待っています。猛ダッシュで楽屋に戻り、ネックの折れたSGを掲げ「折れてもた、誰かギター貸してくれぇ」と声を上げると、たまたまPATAさん率いるRa:IN(ライン)のメンバーの方や関係者の方もおられ、何とも言えぬ顔をされておられました。もちろんPATAさんからお借りする考えなど毛頭無かったのですが、その時の気まずい空気は今思い出しても背中がムズかゆくなります。

その時、「これ使ってください」とK君が彼の愛機のSGを差し出してくれました。K君はYさんの店のバーテンダーでバンドマン。少し私の方が年上でしたが、Yさんと私が飲んだくれていても、いつもいやな顔せずにこやかであったことが印象的でした。
もうドラムはイントロのフレーズをたたき始めています。K君には簡単に礼を言って、廊下を小走りでステージ向かいます。かなり慎重に、、
ステージでは、K君の性格同様のK君のSGは初対面の私に意地悪もせずその素直な音を披露してくれました。
ステージを降りて、K君のところへ向かうと、少々私の汗が掛かったSGをいつも通りにこやかに受け取るK君がいました。

翌日楽器店に持っていき、弦楽器の木工系修理のスペシャリストのEさんに預け、2週間後帰ってきました。

さすがEさん、少々傷は残りましたが、ぴっかぴかになっています。

しかし治ったばかりの頃は、一度折れてしまったSGを見ては、折れる前の音は2度と出ないのかと落ち込んでいました。

それから随分時間が経ちましたが、現在も機嫌よく鳴ってくれています。今となっては戒めも含めて折れてしまったこともよい思い出になっています。
折れていなかったらという仮定は無意味ですが、実際の音を聞いていると、比較してわかるほどの違いはないと思います。歯切れが良くてまろやかな音でしょう?

中古市場に出れば折れた痕跡があるギターなんて価値がないかもしれませんが、元はといえば自分の不注意が原因です。また一流のリペアマンに依頼してすぐに直してもらってもいます。私以外にこのギターの価値が理解できる人はいないと思うと、ずっとそばに置いておきたいなあと思います。

その後、ネック折れの現場となったチキンジョージでは、元町栄町(乙仲通り)の老舗バーのオーナーSさんに率いられ、大西ゆかりさんやクレイジーケンバンドの横山剣さんと共演させて頂く機会も得ましたが、その時もこのSGが素晴らしい音を出してくれました。

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Fender Vibro-King

今回は私が大好きなギターアンプ”Fender Vibro-King”について

改めて「フェンダーアンプ」をwikipediaで検索しますとその中に「1993年にはカスタム・シリーズとして歴代フェンダー・アンプの中でベスト・モデルと賞賛されるヴァイブロキング (Vibro-King) を発表」とありました。

私は他人の評価はあんまり気にしない方ですが、世界中でそう言われているアンプを所有することが出来たのはラッキーだったかも知れません。

そのユーザーは
・ローリング・ストーンズのロン・ウッド
・ザ・フーのピート・タウンシェンド、
・カルロス・サンタナ
・所ジョージ

・Gary Clark Jr.
は野外ライブにて同アンプのクリーンとアッパーオクターブファズサウンドを轟かせてくれています。

そもそもこのアンプとの出会いは、
1996年、私が働いていた楽器店に当時のFender輸入代理店の山野楽器の営業の方が、
「こんなアンプが発売になりまして…」
と台車を押してやってきたことにさかのぼります。

昼間の楽器店はそんなにお客さんがお越しにならないので、オーナーや店長と一緒に「早速音をチェックしてみよう」ということになりました。

とにかくでかい段ボールから30kgオーバーの本体を数人がかりで出してみますとなんと”白(正しくはブロンド)”であることに驚きました。

ただの先入観ではありますがフェンダーアンプといえば当時は”黒”が一般的で”白”というのがとても新鮮であったことを覚えています。
それはフェンダー社の中でも”Custom Shop”で作られた本製品に対する意気込みの表れであったのかも知れません。

早速、試奏用のストラトを繋いで弾いてみました。

感想は、「リバーブサウンドが最上質で音楽的」「聞いたことがないくらい張りのあるクリーントーン」という2点でした。

その時は40万円を超えるフェンダーのフラッグシップモデルアンプの新製品を試奏できる数少ないチャンスだったのですが、Volumeの目盛り3(最大10)で歪み始めるこのアンプの歪みは近隣のお店に迷惑ということもあり、試すことが出来ませんでした。

しかし弾きだして数分後には、このアンプのとりこになってしまいました。

濃密かつローノイズなリバーブサウンドときらびやかなクリーンサウンドはフェンダーアンプはもちろん、他社製品でも比べるものがありませんでした。

とは言え当時20代の私はこのアンプを買えるような金銭的な余裕は有りませんでした。それよりも先に揃えていかねばならない楽器が他に多くあったと言うべきでしょうか。

それから「いつかは手に入れたい…」という思いを秘めて十数年後、友人のお店でライブをする際にある程度の出力のギターアンプを用意せねばならなくなりました。

そこで「数万円出してレンタルするくらいなら買ってしまえ。」
「どうせ買うなら一生使えるアンプにしたらええやん」
という考えに至ります。

どのアンプを買うかを検討し始めた時に思い出したのは、若き日に出会ったあのアンプ”Fender Vibro-King”でした。

一時期は生産・販売が完了していましたが、”20th Anniversary Edition”として復活していたのも何かの縁だったのかも知れません。
家内に相談し、何とか了承を得、あの日に見た巨大で超重たい段ボールが自宅にに届けられた時の感動は今も忘れられません。

📝 Fender Vibro-King 主な仕様:

  • 出力:60W
  • スピーカー:10インチ × 3基(Jensen P10R)
  • 真空管構成:12AX7 × 5、6L6 × 2
  • リバーブ:DWELL、MIX、TONEの3コントロール
  • トレモロ:SPEED、INTENSITY
  • FATスイッチ搭載
  • SEND/RETURN端子あり

現代的なアンプと比較すると少ないコントロールで、1チャンネル、1ヴォリュームで多彩な歪みは望めません。
ましてや、昨今の音楽では外掛けする(アンプではエフェクトを掛けず、PAやレコーディングスタジオのアウトボード、もしくはPCソフトのエフェクトを掛ける)のが当たり前になってきているリバーブに限りあるフロントパネルのスペースを3つも費やしてしまっています(笑)
しかしながら、最終的にはこれで十分に多彩なサウンドが得られますので、いろんなミュージシャンや技術者の意見を取り入れつつ、無駄な機能が削ぎ落された最終形ということが出来るでしょう。だからこそのロングセラーということも出来るでしょう。

さて少々長くなることを覚悟でひとつひとつを説明していきます。
まずはインプットです。2つありますが、2人のギタリストが同時に弾くためではありません。
通常のエレキギターから出力される音声信号は、キーボードやオーディオ機器のライン出力とは違ってとても微細な音声信号ですので、ギターアンプの入力部は大きな増幅をする設計がされています。そこへ出力の大きいアクティブピックアップのギター(電池を必要とするギターは凡そこれにあたります)を接続するとアンプのヴォリュームを絞っても歪んでしまうという現象が起きますので、クリーントーンが得られません。
そこでINPUT2は増幅率を低く設定してあり、通常のギターをINPUT1に接続したときの様なクリーントーンを簡単に得られます。また自宅で小さい音で弾きたいときにも利用できます。
では早速実際の音をご紹介

🎵 試奏音源:

Lenny Kravitz / Stop Draggin’ Around風リフ(Volume8、VibroKingのみ)

Lenny Kravitz / Rock And Roll Is Dead風リフ(Volume8、VibroKingのみ。)

次にリバーブです。ブライアン・セッツァーの使用で有名なFenderの外付け真空管式スプリングリバーブをググって見ましたらリバーブ単体で13万円もしてます。このリバーブが内蔵されていると考えるとそんなに高くない気もしてきます。このリバーブと同じコントロールでDWELLはリバーブの深さ、MIXは生音との混合割合、TONEはリバーブ音のみの明るさをを調節します。
TONEを絞ってDWELLを深くすることでFunkadelic風サウンドになります。Mommy, What’s a Funkadelic?のアーシーというかドープなサウンドに浸れます。
もちろんDick Dale先生のMisirlouの様なサーフサウンドはもろ得意です。

購入当初はリバーブに3コントロールも要らんかな?と考えていた私ですが、どんな設定でも音楽的になってしまうこのリバーブにはハマりました。

つぎはアンプ部です。FATスイッチは文字通りFATなサウンドになりますが、クランチ以上のサウンド時には歪みが上がり伸びが出ます。ブーストと似た感覚です。クリーン時には少し音量が増すと同時に中低音が持ち上がり、軽くコンプが掛かったようなサウンドになります。
自宅で弾くときの様なヴォリューム1~2辺りでもこのFATクリーンが特に気持ちよく出ます。この軽くコンプがかったサウンドは自分が上手になった様に感じられ、練習も楽しく取り組めます。

つぎはトレモロ部。SPEEDは一番遅くしてもそこそこ早くて、INTENSITY(効き具合)を最大にしてもマシンガンサウンドというほどの切れはありません。切れの良さならBOSSのTR-2をおすすめしておきます。設定の幅が狭いのが難点ですが、60年代、70年代サウンドが好きな人にはたまらない音ではないでしょうか。何とも柔らかく揺れる感じは素晴らしいですね。ちなみにINTENSITYを大きくしてリバーブを深くかけますとコマ切れっぽくなった音にリバーブがかかるのでディレイぽいサウンドになり、これも使えます。

拡張性という観点で見ますと、本物のビンテージアンプとは違って各種エフェクターとの連携を考えられており、SEND/RETURN端子が背面についています(写真)。私はLINE6のDL4を繋いでいますが特に問題はありません。プリアンプを通過した後の音にディレイがかかることになるので、音作りのフローとしては理想的なのですが、ギターの音としての一体感は前に繋いだ時の方が良いような気がします。またSEND/RETURNの間にラインセレクターなどの分岐を噛ますことで、スピーカーからの音を出しつつ、ピュアなFENDERのプリアンプサウンドを録音するなんてこともできますが、そのあたりの研究にはまだ至っていません。また、外付けスピーカーを追加してスタック、より大音量を得られる2段積みも可能です。

つまりVibro-Kingとは、ギター直でもクリーンサウンドからSRV並みの歪みが得られ、付属のフットスイッチでFATスイッチのON/OFFとトレモロのON/OFFが操作可能で、ギターのPUセレクトやヴォリューム操作を併用すれば数限りないサウンドを作り出せます。そこにスプリングリバーブも使えるわけですからどんな音でも出せそうな気がしてきます。

ところでトレモロは一定周期で”プツプツ”というノイズが入っていたことがあり、いろいろ試行錯誤した結果、
ガレットオーディオ様が扱われている
オプトカプラ(英語圏ではその見た目からローチと呼ばれているようです)を交換したところ、完全復活しました。

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Jimi Hendrix Stratocaster

 2016.5.27に公開したものを一部訂正、再公開しております。
 
 第1回は私の大好きなFender社”Jimi Hendrix tribute Stratocaster”について
専門用語が多いかもしれませんがギターを始めたばかりの人にこそ読んで頂きたいです。

 1997年にFENDER USAから発売されたギターで、Jimi Hendrix(以後ジミヘンと表記)が1969年夏アメリカの野外ライブ”WoodStock”で使用し、後に”イザベラ”と名付けられた1968年製ストラトを模して作られたいわゆるトリビュートモデルです。

 ジミヘン本人は手が大きかったので、押弦に親指を使うことが多く、時には4弦を押さえるのにも親指を使っていました。そういったプレイを実現しやすくするためか、私が出会ったストラトの中では最もネックが細いです。幅は通常のストラトと同じですが、裏側の膨らみが薄く、張り出した感じもありません。本物のこのギターは現存していますが、これほどまでに細いネックではないのでしょうか?

 まずはその実際の音からお聞きください。
 ・フロントP.U.vol 7~10
 ・Fender / VibroKing vol3.5
 ・JimDunlop FUZZFACE改(オン)
 ・G2D Custom Overdrive BluesCH(オン)
 ・Fulltone ClydeWah(途中オン)

 アンプを繋がない音の段階で明るめで線の細いサウンドですが、同じくアンプから出る音も明るいサウンドです。ネックの細さや張りメイプル指板、ピックアップのポールピースの高さが通常とは逆(1弦側が協調される)であること、リアピックアップのスラント角度が通常とは逆(6弦側が明るく1弦側がまろやかになりレオ・フェンダーが意図したのとは逆)であることなどが複雑に影響しあっていると思われます。

 つまりその明るく繊細なところがこのギターの魅力です。触れるようなピッキングのタッチでもしっかり鳴ってくれますし、どんなアンプ・エフェクターとも相性が良く、ブルース・ロック・ジャズ・ファンク・オルタナ・アンビエントなどなど、どんなジャンルの音楽とも相性が良いです。

 塗装に関しては、ボディは経年劣化で少しクリーム色ぽくなってきました。しかし同時期に買ったGibos SGに比べると、レインチェックやクラックがなく、傷といえば私自身がぶつけたところだけで、全体的に光沢もありますので、ポリ塗装ではないかと推察します。

 それに対してネックは、色素沈着は進んでいますし、ベタベタするところは、こするとどんどん剥がれて、サラサラの白木の部分が出てきます。
 ヘッドもクラックが多く、こちらはラッカー塗装であると推察されます。
 ”イザベラ”と名付けられたStratocasterのレプリカとなるとこういう仕様になるのでしょうか、、

 そういえば、ジミヘンのキャリアの中でも1968年以降というとロックやブルースという枠組みを超えて、より「ジミヘン」独自の音楽を産み出そうとしていたころ、、いろいろなミュージシャンと交流を持ち、より多くのジャンルに挑戦するつもりであったでしょう。このギターはジミヘンのために作られたギターではなかった訳ですが、何らかの偶然で当時のジミの音楽の方向性と一致したのでしょうか。
 
 1990年代以降音楽ジャンルが細分化されていく中、一つのエッセンスとして60年代や70年代回帰のサウンドを大胆に取り入れた音楽が増えました。

 本器の製造年1998年は古き良き「Fender」の復活へ向けて、作りの良いギターをたくさん生産していたように思われます。

 ところで忘れてはいけないところでは、ブリッジが逆なのでアームの取り付け位置が6弦側になるというところです。 

 SRVの愛機“Number One”は、わざわざ左用ブリッジを取り付けるためにボディーを削り、1弦側に空いてしまった穴を埋め戻してまで取り付けています。アーミングしながらピッキングが必要な「I don’t live today」の様な曲を演奏する際にはとても便利だったでしょう。

 ところでなぜ私はこのギターを手にしたか、、、ですが、その昔私はある楽器店に勤めていましたが、当時の店長が私の”ジミヘン”好きを知って発売になったばかりのこのギターを試しに仕入れてくれました。
 店には何日か飾られていましたが、趣味性の高いギター(理由は後述)である為、お客様の注目はあまり集めていないように感じました。
 ところがこのギターを毎日店で見る度、私がギターを始めるきっかけになったジミヘンのモデルであることもあり、店員の私が虜になってしましました。また注目を集めていないからこそ自分が買って手元に置いておかないといけないのでは?と考えるようになりました。

 そして数日後、お金もなかったのでその店長に相談してローンで買ってしまいました。

 購入した当時、私はまだ20代。
 プロのミュージシャンになることを夢見ていましたが今考えますと、自分たちのオリジナリティを研ぎ澄ませ、プロミュージシャンを目指そうという若者が、何十年も前に亡くなっている有名ギタリストのモデルのギターを買うということはあまり賢明でなかったように思います。 

 それから20数年、長くケースに入れたままのこともありましたが、今ではその時無理をして買ったことを良かったと思っています。またその時の自分の決断を褒めてやりたいなぁと思います。

 というのも買って15年を過ぎたあたりから急に音が良くなったと感じています。
 それはアンプで鳴らして云々ということではなく生でチャラーンと弾いてすぐわかる”鳴り”が大きくまた伸びる様になりました。

 アメリカ的合理主義で作られているギターである為、楽器として一人前になるにはそれだけのエイジング(熟成)期間が必要ということなのでしょうか? 

 そう言えば、Eric Claptonの黒のストラト”Blackie”は1956年~1957年製を1970年から使い始めているので、たまたまかも知れませんが関連がありそうです。
 買ったばかりの頃の音

 ところで、このギターはライブで使うことを前提として、以下の通りのセッティングにしています。
・ブリッジのコマをストリングセイバー製に変更。
・スプリングは4本、ノンフローティング
・アーニーボール11/48
・半音下げチューニング
・ステンレス製ジャンボフレットへフレット交換
・アームは不使用

このセッティングのおかげで、
・ひんぱんな弦切れやチューニング乱れ
を防ぎつつ
・1音半以上のベンディング
を可能にしています。

※文中の趣味性の高いギターとは…もともとジミヘン自身が左利きで、右利き用のギターをひっくり返して使っていた(裕福でなかった生活環境でも手に入れ易かった右利き用ギターを反転して左利き用に改造して使っていたため、とか左利き用ギターは生産本数が少ないのでカラーバリエーションが少なかったためそれを嫌ったため、と言われています。)ことにより通常のストラトキャスターと違う弦のテンションやピックアップ配置となり、独特のサウンドを得ていました。
 このギターは右利きの人でもその独特なジミヘンサウンドが得られるようにと考えられたギターなのですが、左利き用のギターを反転して右利き用にコンバートしているのでハイフレットがとにかく弾きにくい!(ジミヘン本人は恐ろしく器用に弾きこなしていますが、、) 
 同様のジミヘンモデルのギターは現在までに沢山発売されていますが、発売後の売れ行きを考慮してか、ハイフレット部分には弾きやすい工夫がなされている場合が多いです。
 しかしこのギターは弾きやすさより、本物への忠実度を優先しており、”ギターを持って右利きの自分の姿を鏡に映すと、左利きのジミヘンと全く同じ”というのが売りだったようで、よりジミヘンフリーク向けです。
 写真を左右反転にしてみますとジミヘン感が出ます。

2025/5/22追記

【Raw Vintage Tremolo Springs】【Tone Shift Plate】を取り付け

**Raw Vintage製トレモロスプリング(RVTS-1)**を取り付け、サウンドの改善に取り組みました。

トレモロスプリングというと目立たないパーツと思われがちですが、弦の端を受け止めているトレモロブロックを弦の張力とバランスをとって引っ張っているので、鳴りやサステインに大きく影響しているはずです。

今回選んだRaw Vintageのスプリングは、50〜60年代のヴィンテージギターのフィールを再現するために開発されたもので、

・素材の張力はやわらかく

・コイルの巻き方は少し太め

になっています。

取り付け前の状態と比較すると、

3本V型 ⇒ 5本

になりましたが、それでも張力が弱く、ねじを締めこむ必要がありました。

もとはどのギターのスプリングかどうかわからぬ物を適当に3本着けていたのですが、それでも現代のスプリングは張力が強すぎるのでしょう。

アーミングもスムーズです。

また弾いていて楽器がしっかり反応してくれる感覚があり、プレイの気持ち良さが一段と増しました。

さらに今回は、ネックプレートを**Freedom Custom Guitar Researchの「Tone Shift Plate(3mm厚・真鍮製)」**に交換しました。

このプレートは通常のスチール製プレートに比べて質量と剛性が高く、ネックとボディの密着度を向上させることで、弦振動の伝達効率を高めてくれます。特に低音の太さやサステインの伸びに変化を感じやすく、取り付け後は「鳴りの芯」が一段と明確になりました。

写真で比較していただければ分かるように、厚みもあり重量感も十分。実際に取り付けてみると、トーン全体に安定感が増し、ピッキングのレスポンスもシャープに。弾いていて「楽器が息を吹き返した」ような感覚がありました。

【まとめ:トータルでの効果】

今回の改造では、

Raw Vintage Tremolo Springs(RVTS-1)

Freedom Tone Shift Plate(Brass 3mm)

という2つのパーツを導入しましたが、特にリアピックアップの音が心地よくなり、耳に痛くなくなりました。

ビンテージのレスポールやテレキャスターがまさにそうであるように。

個人的な持論ですが、エレキギターの音をよくするためには、弦の鳴りをよくすることが、必須であり、近道であると思います。

「電気系」はあくまでそれを大きく取りこぼさなければよい、と考えています。

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