1997 Fender/USA Jimi Hendrix Tribute Stratocaster(通称:ジミヘン・トリビュート)レビュー。
“Woodstock 1969”でジミ・ヘンドリックスが使用し「Isabella」と呼ばれた個体を意識した、癖強めで最高にかっこいい1本です。
このギターは何者?(1997 Fender USA / トリビュートモデル)
1997年にFender USAから発売。右利きの人でも“反転ストラトの配置”を体験できるように設計された、いわゆるトリビュートモデルです。
ピックアップのポールピースやリアPUのスラントなど、一般的なストラトと違う要素が重なり、明るく繊細で、タッチに素直な鳴りが出ます。
弾き心地|「出会った中で最も細い」ネック
ジミ本人は手が大きかったので、押弦に親指を使うことが多く、時には4弦を押さえるのにも親指を使っていました。
そういったプレイを実現しやすくするためか、私が出会ったストラトの中では最もネックが細いです。
幅は通常のストラトと同じですが、裏側の膨らみが薄く、張り出した感じもありません。本物のこのギターは現存していますが、これほどまでに細いネックではないのでしょうか?
実際の音|使用機材とセッティング
- フロントPU Vol:7〜10
- アンプ:Fender Vibro-King Vol 3.5
- Jim Dunlop Fuzz Face 改:ON
- G2D Custom Overdrive Blues CH:ON
- Fulltone Clyde Wah:途中ON
アンプを繋がない音の段階で明るめで線の細いサウンドですが、同じくアンプから出る音も明るいサウンドです。
ネックの細さや張りメイプル指板、ピックアップのポールピースの高さが通常とは逆(1弦側が協調される)であること、リアピックアップのスラント角度が通常とは逆(6弦側が明るく1弦側がまろやかになりレオ・フェンダーが意図したのとは逆)であることなどが複雑に影響しあっていると思われます。
つまりその明るく繊細なところがこのギターの魅力です。
触れるようなピッキングのタッチでもしっかり鳴ってくれますし、どんなアンプ・エフェクターとも相性が良く、ブルース・ロック・ジャズ・ファンク・オルタナ・アンビエントなどなど、どんなジャンルの音楽とも相性が良いです。
塗装・経年|ボディとネックで“性格が違う”
ボディは経年劣化で少しクリーム色ぽくなってきました。
しかし同時期に買ったGibos SGに比べると、レインチェックやクラックがなく、傷といえば私自身がぶつけたところだけで、全体的に光沢もありますので、ポリ塗装ではないかと推察します。
それに対してネックは、色素沈着は進んでいますし、ベタベタするところは、こするとどんどん剥がれて、サラサラの白木の部分が出てきます。
ヘッドもクラックが多く、こちらはラッカー塗装であると推察されます。
“イザベラ”と名付けられたStratocasterのレプリカとなるとこういう仕様になるのでしょうか、、
1968年
そういえば、ジミヘンのキャリアの中でも1968年以降というとロックやブルースという枠組みを超えて、より「ジミヘン」独自の音楽を産み出そうとしていたころ。
いろいろなミュージシャンと交流を持ち、より多くのジャンルに挑戦するつもりであったでしょう。このギターはジミヘンのために作られたギターではなかった訳ですが、何らかの偶然で当時のジミの音楽の方向性と一致したのでしょうか。
発売背景|90年代の“回帰”とFender復活期
1990年代以降音楽ジャンルが細分化されていく中、一つのエッセンスとして60年代や70年代回帰のサウンドを大胆に取り入れた音楽が増えました。
本器の製造年1998年は古き良き「Fender」の復活へ向けて、作りの良いギターをたくさん生産していたように思われます。
このモデルのメリット|ブリッジ反転の恩恵
ブリッジが逆なのでアームの取り付け位置が6弦側になるというところです。
SRVの愛機“Number One”は、わざわざ左用ブリッジを取り付けるためにボディーを削り、1弦側に空いてしまった穴を埋め戻してまで取り付けています。
アーミングしながらピッキングが必要な「I don’t live today」の様な曲を演奏する際にはとても便利だったでしょう。
入手の経緯|「買ってよかった」と言えるまで20年
ところでなぜ私はこのギターを手にしたか、、、ですが、その昔私はある楽器店に勤めていましたが、当時の店長が私の”ジミヘン”好きを知って発売になったばかりのこのギターを試しに仕入れてくれました。
店には何日か飾られていましたが、趣味性の高いギター(理由は後述)である為、お客様の注目はあまり集めていないように感じました。
ところがこのギターを毎日店で見る度、私がギターを始めるきっかけになったジミヘンのモデルであることもあり、店員の私が虜になってしましました。また注目を集めていないからこそ自分が買って手元に置いておかないといけないのでは?と考えるようになりました。
そして数日後、お金もなかったのでその店長に相談してローンで買ってしまいました。
購入した当時、私はまだ20代。
プロのミュージシャンになることを夢見ていましたが今考えますと、自分たちのオリジナリティを研ぎ澄ませ、プロミュージシャンを目指そうという若者が、何十年も前に亡くなっている有名ギタリストのモデルのギターを買うということはあまり賢明でなかったように思います。
それから20数年、長くケースに入れたままのこともありましたが、今ではその時無理をして買ったことを良かったと思っています。またその時の自分の決断を褒めてやりたいなぁと思います。
というのも買って15年を過ぎたあたりから急に音が良くなったと感じています。
それはアンプで鳴らして云々ということではなく生でチャラーンと弾いてすぐわかる”鳴り”が大きくまた伸びる様になりました。
アメリカ的合理主義で作られているギターである為、楽器として一人前になるにはそれだけのエイジング(熟成)期間が必要ということなのでしょうか?
そう言えば、Eric Claptonの黒のストラト”Blackie”は1956年~1957年製を1970年から使い始めているので、たまたまかも知れませんが関連がありそうです。
実際の音(2000年頃)
実際の音(2025年)
🎸「もっと弾きやすくしたい」
ネック・弦高・音質を見直すだけで変わります。
🔧 ギター調整やシールド制作も承ります。
🛠️ サービス内容はこちら
ライブ前提のセッティング(現行・過去含む)
このギターはライブで使うことを前提として、以下の通りのセッティングにしています。
- ストリングセイバー製サドルへ交換
- スプリング4本/ノンフローティング(※現在は変更)
- 弦:Ernie Ball 11-48
- 半音下げ(※現在はレギュラー)
- ステンレス製ジャンボフレットへフレット交換
このセッティングのおかげで、
・ひんぱんな弦切れやチューニング乱れ
を防ぎつつ
・1音半以上のベンディング
を可能にしています。
※文中の趣味性の高いギターとは…もともとジミヘン自身が左利きで、右利き用のギターをひっくり返して使っていた(裕福でなかった生活環境でも手に入れ易かった右利き用ギターを反転して左利き用に改造して使っていたため、とか左利き用ギターは生産本数が少ないのでカラーバリエーションが少なかったためそれを嫌ったため、と言われています。)ことにより通常のストラトキャスターと違う弦のテンションやピックアップ配置となり、独特のサウンドを得ていました。
このギターは右利きの人でもその独特なジミヘンサウンドが得られるようにと考えられたギターなのですが、左利き用のギターを反転して右利き用にコンバートしているのでハイフレットがとにかく弾きにくい!(ジミヘン本人は恐ろしく器用に弾きこなしていますが、、)
同様のジミヘンモデルのギターは現在までに沢山発売されていますが、発売後の売れ行きを考慮してか、ハイフレット部分には弾きやすい工夫がなされている場合が多いです。
しかしこのギターは弾きやすさより、本物への忠実度を優先しており、”ギターを持って右利きの自分の姿を鏡に映すと、左利きのジミヘンと全く同じ”というのが売りだったようで、よりジミヘンフリーク向けです。
写真を左右反転にしてみますとジミヘン感が出ます。
改造レビュー|Raw Vintage Springs & Freedom Tone Shift Plate






Raw Vintage Tremolo Springs(RVTS-1)
を取り付け、サウンドの改善に取り組みました。
トレモロスプリングというと目立たないパーツと思われがちですが、弦の端を受け止めているトレモロブロックを弦の張力とバランスをとって引っ張っているので、鳴りやサステインに大きく影響しているはずです。
今回選んだRaw Vintageのスプリングは、50〜60年代のヴィンテージギターのフィールを再現するために開発されたもので、
・素材の張力はやわらかく
・コイルの巻き方は少し太め
になっています。
取り付け前の状態と比較すると、
3本V型 ⇒ 5本
になりましたが、それでも張力が弱く、ねじを締めこむ必要がありました。
もとはどのギターのスプリングかどうかわからぬ物を適当に3本着けていたのですが、それでも現代のスプリングは張力が強すぎるのでしょう。
アーミングもスムーズです。
また弾いていて楽器がしっかり反応してくれる感覚があり、プレイの気持ち良さが一段と増しました。
Freedom Tone Shift Plate(真鍮 3mm)
このプレートは通常のスチール製プレートに比べて質量と剛性が高く、ネックとボディの密着度を向上させることで、弦振動の伝達効率を高めてくれます。
特に低音の太さやサステインの伸びに変化を感じやすく、取り付け後は「鳴りの芯」が一段と明確になりました。
写真で比較していただければ分かるように、厚みもあり重量感も十分。実際に取り付けてみると、トーン全体に安定感が増し、ピッキングのレスポンスもシャープに。
弾いていて「楽器が息を吹き返した」ような感覚がありました。
【まとめ:トータルでの効果】
今回の改造では、
Raw Vintage Tremolo Springs(RVTS-1)
Freedom Tone Shift Plate(Brass 3mm)
という2つのパーツを導入しましたが、特にリアピックアップの音が心地よくなり、耳に痛くなくなりました。
ビンテージのレスポールやテレキャスターがまさにそうであるように。
個人的な持論ですが、エレキギターの音をよくするためには、弦の鳴りをよくすることが、必須であり、近道であると思います。
「電気系」はあくまでそれを大きく取りこぼさなければよい、と考えています。


